近年では滑る表面加工+柔らかいポリエステル+黒色が人気の風潮のテニス界
テンションの違い、ガットの材質の違い、形状の違い等ガットだけでも様々な使用感を再現出来ることが知られています
しかしながらこれらの知識・経験の中には明らかに”嘘”と思える情報も少なくなく、ジュニアから一般プレイヤーまでが知らず知らずのうちに実害を受けている事があります
本記事においては過去の誤った知識・考え方を見直すべく、学術的論文からの記述をまとめてみました!
【要約】ガットに関する嘘について
- テンション調整における間違い
- ガットの材質における間違い
- ポリの伸びにおける間違い
ぺんてぃ
過去の知識や勘違いの知識が延々とネットに残ってるのも原因
自分自身もアップデートのために日々勉強中!
テンションの上げ下げの真実
テンションは”ボール自体”の飛びに影響しない
テニス界において最も誤った認識を持ちやすい内容がテンションとボールの飛びの関係性について
タイトルのように実はテンションを上げようと下げようと、”ボール自体の”飛びには影響しません
ボールの飛びは最もボールの反発係数が関係しますが、硬く張ろうが柔らかく張ろうがボールの変形量に有意差はないため関係ないと言えます
※テンションを下げることで飛び自体の変化はなくとも、軌道が上がるため飛距離が出ると言われています
緩く張ってもテニス肘は治らない
”ローテンション=肘に響かない・身体に優しい”という認識がテニス界には蔓延してますが、これは明らかな嘘!
インパクト時に発生する衝撃は、ボールとラケットの衝突エネルギーとその間に失われた力学的エネルギーロス量でおおよそ決定します
65ポンドで張ったラケットの衝撃量に対し、45ポンドで張ったラケットの衝撃吸収性に優位性がなく、ガットのテンションの変更によって直接的に肘や手首に影響力に差がないことがわかっています
スポーツ工学で明らかにされていても、現場レベルで理解されていないため真実が広まっていません
材質の違いについての真実
ポリは他材質より回転が掛かる
ポリで回転掛けられないなら、ナイロンの方が回転を掛けられる!という理論をしばしば見かけることがありますが、これは嘘!
ポリエステルガットはナイロンよりも30%、ナチュラルより11%スピンを発生させる力が強い事がわかっています
ちなみにノッチが出来たナイロンにシリコンオイルを塗布すると、塗布前よりもスピン量が平均30%アップ・接触時間平均16%アップというデータもあります
ナイロンガットでスピンを掛けたい場合はストリンググライド(¥1,700/100回分)をお勧めします
柔らかさはインパクト時の剛性で決まる
柔らかい打感を感じるためには、インパクト時の面圧を考慮する必要があります
これは張り上げ時の張力でも、張りあがり後の面圧でもなく、インパクトした瞬間の面圧=ガット面の剛性が関係します
ゆるゆるの張り上げ状態でも、インパクト時の剛性が高いが故にポリが硬いと感じられるのです
インパクト時の剛性は、テンション・材質・ゲージ・ストリングパターン等の要素の組み合わせから決定します
ポリの性能維持についての間違い
テンションロスだけ性能低下
ポリはすぐに性能が落ちると言われていますが、どうやらこの認識は間違いである可能性が高いです
と言うのも、テンションロス以外でのパフォーマンスの低下は他の材質よりも少ないというデータがあります
ポリは伸びてダメになるのではなく、硬くなってスナップバックしなくなってダメになると仮説立てられています
性能低下はメインストリングが関係
それでも私たちは使いこんだポリに対して、コントロールが悪くなる・回転が掛からないと感想を持ちます
これらの原因はメインストリングのスナップバックの戻りの部分が影響していると考えられています
使い古したポリでも、ナイロンより少ない力でガットを動かすことが出来ます
しかしながら度重なるスナップバックにより、ガットが硬化し戻り辛くなることでスピンが掛からなくなっていきます
そしてスピンが掛からなくなったことで、他の項目では特に数値を下げていないのにコントロールが悪くなったと感じるのでしょう
場面別 Q.A. 特集
Q.肘が痛いけどどうすれば良い?
ぺんてぃ
A. 適度な重量を持つ薄ラケを使う!
軽量ラケットは逆効果なので注意
後はフォーム改良・安静療法をしましょう
ちなみにラケットに0.2秒以上振動が残るものはリコール対象
Q.道具でボールを飛ばすためには?
ぺんてぃ
但し緩く張ってもトランポリン効果は機能せず、軌道が上がって飛距離が出るという点に注意
飛距離を抑えたければガットを硬く張る事!
Q.結局ポリが最強?
ぺんてぃ
但し自分に合った理想のインパクト剛性を考えた時には絶対ポリが良いとは限らない
しかしポリを使える選手が強い事には変わりなし!
ガット選びでできる事!
- 打感、フィーリングの調整
- ポリを選んでスピンを掛ける事
- テンションで打球角度の調整
ガット選びで自分のパフォーマンスに大きく影響させられる点は主に上記の3つ!
ケガを治すため、ボールスピードを高めるためにはあまり効果がありません
まだ解明されていないことの多いスナップバックの全容を掴むことがガット選びの柱になることは間違いないので、ガットの戻り感を意識してお気に入りのストリングを探していきましょう!
いつの日か練習毎にシリコンオイルを塗る行為が習慣化されそうな気がします
参考文献
Kawazoe Yoshihiko “Practical String performance theory 1 of the tennis racket (Power, Control, Feel and Performance Life) ”
https://kawazoe-lab.com/wp-content/uploads/2016/07/20131101.pdf(2019年8月21日確認)
ナチュラル×ボリのハイブリッドでも
シリコンオイルは有効でしょうか?
よろしくお願いします。
有効だと思いますよ!
ちなみにポリ同士だと既に表面がツルツルなので、そこまで効果は出ないのかな?とも思いますが、バボラのブラストなんかシリコンコーティングされたガットなんで、普通のポリに塗ってもいいかもしれません!
僕も試してみます!
65ポンドで張ったラケットの衝撃量に対し、45ポンドで張ったラケットの衝撃吸収性に優位性がなく、ガットのテンションの変更によって直接的に肘や手首に影響力に差がないことがわかっています
以上の内容に関して質問させてください。例えばスイートスポットを大きく外している場合や、インパクトが理想のタイミングから大きくずれた場合には、硬い張りの場合の方が衝撃が強くなる、といったことは考えられるでしょうか?自分はまだ大丈夫ですが、周りにもテニス肘の方は結構いるので、お考えご教示いただけると嬉しいです!
外した場合は別問題だと思います!
外した場合は硬い方が衝撃は強いと思います。
テンション下げるとスイートエリアを広げる(瞬間的な気持ちよさはなくなるかもですが、快適に打てるゾーンが広がる)効果があります。
ただ本件のテーマとして誤解してほしくないのは、衝撃で怪我をしてるわけではなく、衝撃に備えて筋肉が不必要に収縮してそれが怪我に繋がってると思われます。
要するにインパクトの時に力を入れすぎて、スポットを外しているとテニス肘や手首の痛みにつながるということですね!
衝撃云々は力学的な主張であって、衝撃がなければ身体は痛くならないとは、言えないからです。
なるほど!
「スイートスポットで常に捉えられるわけではない」という点を考えると、
やはりある程度は柔らかめセッティングの方が肘には優しいのですかね、と大雑把ですが、そんなふうに捉えておこうと思います。
力学的な部分も面白いですね。
示唆に富んだ文章とご返信ありがとうございました!