1本3万円程度するテニスラケット
この価格の妥当性について考えたことはありますか?
高い・安いと決めるには製造管理的な視点から考えると、作り方という要素が非常に重要になります
本記事ではどうやってラケットを作っているかを参考となる画像・動画と共にまとめてみました!
【まとめ】テニスラケットの作り方
- 開発期間は約2年間?
- 開発拠点と製造拠点は違う?
- 原価計算は1円単位の積上
テニスラケットって簡単な作りだけれど、意外と奥が深い逸品
工業品の製造工程は、メーカー系の企業で働かれている方でも調達管理・購買の部門で仕事をしていないとなかなかピンと来ないところ
原価ってどのくらいなんだろうな~と想像しながら見ると特に面白いです!
具体的な製造工程
設計・金型製作
一番初めはモデルの設計。シリーズや位置づけ、使用感をキャドを用いて検討・製図!
また後工程の成型の前準備として金型を作る必要もあり、施策の段階で何個もの金型を製作します
ラケットの金型に限らず、金型の多くは巨大な金属の塊から削り出して作ります
カーボン生成・配合
次にラケットの性能に直に関わるカーボンを作り上げます
カーボンメーカーから仕入れたカーボンロールを使う長さ分だけ短冊状にカット
カーボン数種類・その他独自の材料を一緒に混ぜ、帯状に層を作っていきます
カーボン繊維の価格は高く、ラケットの原価の半分がこのカーボン代と予想されます
型へ巻き付け
帯状に作ったカーボンシートを型に巻き付けます
その後事前に作った金型にカーボンをセット
熱成型
その後高温に熱した装置の中に金型を入れ、成型します
ここの温度や時間が甘いと十分な強度を持ったラケットに出来上がりません
またやりすぎてしまうと欠け等が発生してしまう、神経質な工程
表面仕上げ
形が出来たラケット表面の形を整えたり、バリ取りを実施
型で成形しているため大きく形を整える必要がないので、表面をきれいにするといった感覚になります
フレーム毎によって誤差が出るのは、ここが手作業だからでしょう
内部へウレタン注入
意外と知られていないのがこのウレタンの充填工程
テニスラケットはカーボンのみだと非常に強度が脆いのが特徴
そのためラケットのフレーム内部にポリウレタンと呼ばれる合成樹脂を注入します
イメージが湧かない方は内部にゴムを入れていると思って大丈夫です
ちなみにプロのフレームが折れやすいのはこのウレタン量が少ないからと言われています
ガット穴開け
フレームの作りが終わってからガット穴を作っていきます
ドリル形状をしたエンドミルで加工します
塗装
フレームの加工が全て終わったら塗装へ
柄に合わせてマスキングを行い、手作業によってスプレーを噴射していきます
最近のラケットはシンプルな柄が流行っていますが、このマスキング回数を減らすことで製造コストを減らす目的もあると考えられます
最終仕上げ
その後グロメット・元巻きを手作業でセットしていきます。
ラケットの製造現場は各メーカー複数ある?らしいですが、多くのメーカーが設計以外の工程を中国等の人件費が安い国で行っています
そのため下記画像のように欧米で加工しているラケットは、特注扱いのためプロストック・パーソナルラケットである可能性が高いです